クルマ×食の美味しい関係(ベントレー × HIGASHIYA)

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「さまざまのこと思ひ出す桜かな」という松尾芭蕉の句。日本人が桜に抱く感情は、そのDNAに刻まれているのではないかと、非科学的な思考がめぐるほどだ。桜が散り始め、若葉が力強く芽吹く季節。わずかに残る桜を愛でながら、「ベントレー」コンチネンタル・フライングスパーのリアシートを茶室に見立て至福の時間を過ごした。

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至高のドライバーズ・サルーンが備えるリアスペース
英国「ベントレーモーターズ」は1919年に設立、ル・マン24時間レースの優勝などモータースポーツで輝かしい記録を残した。その功績から高性能スポーツカーブランドとして、世界の富裕層に支持されるようになった。今回取り上げたコンチネンタル・フライングスパーの起源は1957年にまで遡る。また当時から「最速4ドアサルーン」としても名を馳せていた。デビュー時は6気筒エンジンを搭載していたが、その二年後、後に伝統のV型8気筒と呼ばれるエンジンを得る。そして、この半世紀以上も前に設計されたV型8気筒をベースにしたエンジンは、ミュルザンヌや三代目フライングスパーなどの現行モデルにも搭載しているというから驚きだ。初代から約50年の時を経てジュネーブショーでデビューした二代目コンチネンタル・フライングスパー。車両重量が2.5トンもあるにもかかわらず、W型12気筒エンジンを採用したことで、0-100km/h加速は5.2 秒で駆け抜け、最高速度は312km/hに達する。二代目も「最速4ドアサルーン」という名を継承した。

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英国にあるベントレーの本拠地、クルー工場で作られているコンチネンタル・フライングスパー。世界で最も成功した12気筒エンジンを搭載したラグジュアリー・サルーンといわれている。その排気量6.0リットル、W型12気筒エンジンをツインターボで加給することで、最高出力は560ps、最大トルク66.3kgmを発生させる。これにAWDシステムと6速ATを組み合わせている。全長5310mm、全幅1930mm、全高1480mmというフライングスパーの数値に対して、現行メルセデス・ベンツSクラスのロングは全長5250mm、全幅1900mm、全高1495mm、ほぼ同等サイズだ。

ラグジュアリー・サルーンとしての高い資質を満たすために採用された技術の数々には、サイドとリアウインドウの防音ガラス、3層構造のボディアンダートレーやホイールアーチライナーなどで騒音を低減する工夫がなされている。走行時の雑音が少ないことで、W型12気筒のエンジン・サウンドを堪能しながら、リラックスしたドライビングができた。

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移り行く日本の四季を「果子」で感じる
千利休の茶室が二畳ほどの空間であったように、フライングスパーのリアスペースという限られた空間を茶室に見立てた。リアドアを開放して現れたのが咲き残った桜と飛び石。茶室に面する庭は路地と呼ばれ、そこには客人が茶室に向かうために飛び石が存在する。今回訪れた庭園の飛び石が、フライングスパーに向かって置かれているように見えたことから、実際に茶室に居るように思えた。茶道は「もてなし」の美学ともいわれる。多忙に追われる日常を忘れ、コンチネンタル・フライングスパーの「茶室」で自らを「HIGASHIYA」の果子と茶で「もてなす」。

先人たちは、身近な自然の恵みから、大きな自然を見立てることで四季の変化を愉しんでいたという。また「菓子」は干した果実や木の実を食したことが起源ともいわれ「果子」とも書くという。この伝統的な美意識を現代に息づかせたいというコンセプトのもと、洗練された四季折々の「果子」で楽しませてくれるのが「HIGASHIYA」だ。

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抹茶の風味が活かされた餡でレーズンを包み込んだ「萌葱」(画像:右)、上品な甘さのかぼちゃ餡に酸味のあるクリームチーズを合わせた「柑子」(画像:中上)、紫芋の風味と甘さを活かした餡にカシューナッツを合わせた「濃紫」(画像:中下)、栗ならではの素朴な口当たりとプレーンな甘さを活かした餡で仕上げた「路考茶」(画像:左)。どれも餡が滑らかで、それだけでも優しい気持ちにさせてくれるが、その中身にも凝りがあり美味しさだけでなく食感も楽しめる。それぞれの果子には日本の伝統色にちなんだ名がつけられ、「HIGASHIYA」の美意識を感じさせる。

ドライブ先で日常というスイッチをオフにするために、ドライバーズシートからリアシートへ敢えて移動してみる。普段着座する機会が少ない愛車のリアシートで、自分なりにアレンジした茶の湯で寛ぎながら、視覚や味覚によって日本の四季を感じるのはいかがだろうか。

<問い合わせ先>
HIGASHIYA

<text : 坪谷 直哉 photo : 上田 穂高>

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